「嫁入りの着物」として喪服は必要か?
2024年08月20日
喪服の着物をつくる割合
「きものやまなか」店主の山中邦彦です。
今回は「喪服の着物は今でも必要でしょうか?」という質問をよくお受けしますので、お答えさせていただきます。
「きものやまなか」のお客様データをしらべてみると、お嬢さまが28歳までになるまでに約6割の方が喪服の着物をご用意されます。
昔にくらべると着ることが少なくなった喪服ですが、今でも多くの方が喪服をおつくりになるのはナゼでしょうか?
その3つの理由を解説します。
喪服をつくる3つの理由
①明日着なければいけない喪服
結婚式に着る黒留袖などは、半年ぐらい前に連絡あるので、いま持っていなかったとしても、準備するだけの時間が十分にあります。
しかし喪服については、明日もしくは明後日着なければいけないというケースがあるので、持っていないと間に合いません。
また病人が出てからでは、いかにも亡くなるの待っているようで、準備はしにくいもの。
そのため喪服については、ご家族が健康な時におつくりになる方がほとんどです。
あと「喪服はレンタルで」という方もおられますが、どこの・誰が・どんな悲しい席で着たかわからない着物を皆さんは着たいと思いますか?
ひょっとしたら、あなたが借りるその「貸衣装の喪服」は、悲惨な事件や事故で家族が亡くなり、遺族が泣き叫ぶ葬儀で使われたものかもしれません。
これはあくまで 私の個人的な意見ですが、喪服をレンタルで済ますなら、洋服で参列された方が私は良いと思います。
嫁入り道具としての喪服
名古屋は皆様もご存知のとおり「お嫁入りのお仕度が派手」という事で知られています。
そのため、昔なら嫁ぎ先のお母様にどの着物を嫁入り道具としてお持ちすれば良いか、お伺いを立てたものです。
しかし今の時代 そのような事をたずねても、先方はこちらに気を使い、
「何も持ってこなくて いいですよ。」
という返事しか返ってきません。
ではその言葉どおり、何も持って行かないと今度は、
「〇〇さん、本当に何も持って来なかったのね…」
なんて言われたりします(汗)
実際に私共のお店でも、嫁いだ後にお姑さんから嫌味を言われ、しぶしぶ実家のお母さまと喪服を買いに来られる方があとを絶ちません。
そんな事なら最初から言ってよ!とツッコミを入れたくなりますが、
「喪服ぐらいは、何も言わなくても用意してくるでしょう。」
という意識は、今でも根強く残っています。
昔のようにタンスに入りきらない程、着物を用意する必要はないと思いますが、必要最低限のお仕度は準備しておいた方が良いのではないでしょうか。
かりに喪服を着ることが、しばらくの間なかったとしても、
「お嫁さんのご実家は、きちんとしたご家庭なんだな」
ということが、先方のお母さまにもおわかり頂けると思います。
御守りとしての喪服
現在 愛知や名古屋市内の慣習では、喪服の家紋は嫁ぎ先ではなく、ご実家の家紋を入れます。
そしてこれには意味があります。
喪服についている5つの家紋は、ご実家のご先祖様や両親をあらわし、嫁いでからも「御守り」として、お嬢様を災難・病気などから守ってくれるというものです。
つまり、喪服を着るという事は、家族の愛に守られている証であり、日本独特の文化でもあるのです。
人が身につける「衣装」は時代と共に変化していきますが、この喪服と家紋に関する考え方は、日本人として大切にしていきたいですね。
以上「喪服をつくる3つの理由」をお話させて頂きましたが、お葬式に参列する 一番の目的は、亡くなられた方へ今までお世話になった「感謝の想い」を伝えることです。
喪服は、家紋が5つ付いている日本女性の第1礼装(最も格が高い装い)ですので、この想いを伝えるのに最も適した装いです。
とくにお亡くなりになったのが、お父様やお母様であったり、ご主人である場合、その想いはひと言では言い尽くせないでしょう。
もし「喪服の着物が必要なのか」をお考えになる時は、先ほどお話した「3つの理由」以外に、あなたならどんな装いでこの想いを最愛の人に伝えるかを考えてみてください。
またお嬢様のお嫁入りのお支度としてお考えになる場合は、ご自分の旅立ちの時「お嬢様には、どんな想いと装いで見送ってもらいたいか?」
そして「日本人として、どんな女性でいてほしいか?」もあわせてお考えになってみて下さい。
喪服販売店「きものやまなか」
創業161年の老舗呉服店「きものやまなか」では、生地・染めにこだわったオリジナル喪服を販売しております。
きものやまなかオリジナル喪服セット
価格 | 338,000円(税込) |
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夏冬20点セット内容 |
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