借りた着物を返す時のマナーとお礼の仕方
2024年08月18日
借りた着物はクリーニングして返すのがマナー
きものやまなか店主の山中邦彦です。
最近は、結婚式や成人式などで、知人から着物を借りて出席される方が増えています。
借りた着物をどのようにしてお返しするかですが、これは言うまでもなく、クリーニングやお手入れをしてから返すのが最低限のマナーです。
かりに貸した側から「着た後は何もしなくて良いわ」と言われても、言葉どおり受け取ってはいけません。
日本人は、その点、以心伝心・暗黙の了解と言いますか、口に出さなくても「そんな事ぐらい言わなくてもわかるでしょ」という考え方を持っています。
実際、貸した側が「何もしなくて良いよ」と言ったら、本当に何もせず、シワくちゃのまま着物を返却され、しぶしぶ自分でクリーニングにお持ちになるケースが後を絶ちません。
そんなお客さまは決まって、
「まさか、本当に何もせず返すとは思っていなかった…」
「普通はクリーニングしてから返すよね? 」
「もうあの人にはゼッタイ貸さない(怒)」
など、本人には言えない分、その経緯や愚痴を私にお話しされてからお帰りになります。
貸した側と借りた側の関係が、その後どのようになったかは知りませんが、貸した方から不快に思われないよう、今回お話しする着物の返却方法をご参考にしてみてください。
借りた着物のクリーニングで大切な3つのポイント
借りたお着物をお手入れに出すときのポイントは、つぎの3点です。
- 着用前に汚れがないか確認しましょう。
- 着用後に汚れがないか確認しましょう。
- 早めに和服専門のクリーニング店に出しましょう。
1.着用前に汚れがないかを確認しましょう。
この1の作業はとても大切です。
なぜなら、着用前に汚れていても、貸した側は意外と気づいていないケースがよくあるからです。
そしてこの確認をせずに着てしまうと、その汚れが元々ついていたのか、自分がつけた汚れなのか分かりません。
トラブルの原因ともなりますので、必ずご着る前に汚れやほつれがないかチェックしておきましょう。
脇のほつれ
2.着用後は、自分がつけた汚れがないか確認しましょう。
和服を着た場合、どんなに気を付けていても汚れはつくものです。
衿につく化粧汚れや、結婚式などで食事をしたときは、食べ物や飲み物の汚れがつく事がありますので、チェックしておきましょう。
そして雨が降った場合などは、裾回りなどに泥ハネついていたり、雨ジミになっていることもありますので要注意です。
3.出来るだけ早く和服専門のクリーニング店に出しましょう。
着物の汚れは時間がたてばたつほど、落としにくくなります。
着用後は着物ハンガーなどで陰干しをして、早めに和服専門のクリーニング店に出しましょう。
着物ハンガー
またクリーニングに出す時、汚れがついている箇所が分かっているなら、お店の人に「〇〇に汚れがついているので、染み抜きもお願いします」と伝えておきましょう。
そして、仕上がり予定日がわかり次第、先方に「○月○日頃にクリーニングが仕上がってくるので、でき次第すぐにお返しします。」と、返却予定日を前もってお伝えしておく事もマナーとして大切です。(和服のクリーニングは洋服と違い1~2カ月かかります)
パールトーン加工済みの着物
お着物や帯によっては、パールトーンガード加工と呼ばれる撥水加工が施してあることがあります。
この加工済みのお着物は、必ずパールトーン取扱店に出しましょう。
加工済みの着物を普通のクリーニングでお手入れしてしまうと、撥水効果が減退することがあります。⇒ 全国のパールトーン加工取次店はコチラ
借りた着物をネットのクリーニング店に出しても良いのか?
では、借りた着物をネットのクリーニング業者に出すのは良いのでしょうか?
実際、ネット業者のクリーニング料金はお安く、利用される方が増えています。
これについてのお答えですが、基本的に借りた着物のクリーニングをネット業者に出すのはやめておかれた方が良いです。
なぜなら、クリーニングの品質自体はそれほど変わりませんが、貸した側が「私の大切な着物をネットの業者に出すなんて…」と思われるケースがあるからです。
また、ネット業者に出したことを黙っていたとしても、着物を包んでいるタトウ紙や、クリーニングタグなどに店舗の名前が記載されていることもあり、ネットで出したことが、先方に分かってしまう可能性もあります。
そのため、ご自分の和服なら構いませんが、他人から借りた和服のクリーニングは、ネットではなく、店舗を構えるお店に持ち込む方が無難でしょう。
自分でクリーニングに出してはダメな場合
さて、この着物お手入れですが、自分でクリーニングに出さない方が良いケースもあります。
それは持ち主の方が、その着物を大切に思っておられ「お手入れに出すのは、必ずこのお店」と決めておられるケースです。(たいていの場合、その着物を購入したお店である事が多いです。)
つまり「着たあとは何もしなくていいわ」という言葉の真意が「この着物の手入れは、いつもお願いしているお店があるので、勝手に知らないお店に出さないで」という意味でおっしゃっている事があります。
そもそも、そのような大切な着物は、あまり人には貸さないので、レアケースではありますが、可能性はゼロではないので確認が必要です。
そして、もしこれに該当する場合は、何もせず丁寧にお返しして、それにかかるクリーニング費用の負担を申し出るか、その料金に相当する御礼の品(菓子折りなど)をお渡し、感謝の気持ちをお伝えしましょう。
着た後のお手入れが面倒なら…
ここまで色々とお話してきましたが、先方に気をつかったり、着る前のチェックや、クリーニングに出す手間など「着物を借りるのって、けっこうタイヘンね…」と思われた方も多いのではないでしょうか?
しかし、買えば何十万もする物をタダで借りるわけですから、ある程度の手間や責任が伴うのは仕方がないことです。
そしてもし、これらの手間がどうしても煩わしいのであれば、人から借りるのはやめて、貸衣装店などでレンタルすることをおすすめします。
貸衣装であれば、気楽に着る事ができますし、着用後もそのままお店に返却するだけで、お手入れ等の手間はいっさい不要です。
また費用に関しても、最近はネットを中心に、とてもお安くレンタルできるようになってきました。
着物クリーニング やまなか
知人から借りた「大切な着物」をお手入れは「きものやまなか」までご相談ください。
当店は創業161年の呉服専門店として、素材を見極める目を持っています。
クリーニングで持ち込まれた着物は、生地を痛めない最適な方法をご提案し、一点一点丁寧にお仕上げします。
パールトーン取扱店でもありますので、加工済の着物も安心してお持ち下さい。